2017年12月28日

2017年中もお世話になりました。2018年もよろしくお願いいたします。

 RSNは今日が、2017年最後の勤務日となります。来年は、1月4日が最初の勤務日、相談電話の受付は翌5日からです。2017年中もお世話になりました。

 このブログも約4カ月、放置してしまいました。6月に月刊のニューズレター「安心娯楽通信」を創刊し、書きたいことを書くことのできる新しい媒体ができたことが最大の理由です。何か書きたいことができれば、まず「安心娯楽通信」のネタにし、次に別のウェブサイトに書いて、こちらは最後となってしまっていました。

 2017年は政府により、カジノ導入に向けた「環境整備」として、「ギャンブル等依存症」対策がすすめられた1年でした。「ギャンブル等」とは、ぱちんこ(パチンコ・パチスロ)と公営競技(競馬、モーターボート(競艇)、競輪、オートレース)を指します。ぱちんこ業界では、「ギャンブル依存症」対策の一環として遊技機の射幸性抑制のために国家公安委員会規則が改正されました。今月25日には、ぱちんこと公営競技に家族申告による排除プログラムを導入することが、政府の方針として示されました。

 政策としての「ギャンブル依存症」対策は動き始めたばかりです。ぱちんこでは、家族申告プログラム以外、私たちRSNの活動をはじめ、ある程度の積み重ねがあると言えます。ですが公営競技の取り組みは端緒に就いたばかりです。また、年の瀬に出された家族申告プログラムがぱちんこと公営競技でうまく機能するのかどうか、なんとも推測できません。

 2018年には、IR実施法案の審議が行われます。その過程では、依存問題の次の段階として、合法化のための法整備など、カジノを日本に迎え入れる準備が多面的に行われることになります。このような動きがRSNの活動にどのような影響を与えるのでしょうか。

 来年も、「ギャンブル等」の各業界にとって、各事業者にとって、各利用者・ファンにとって、そしてRSNにとって、激動の1年となりそうです。2018年もよろしくお願いいたします。

 AGFJ・平田
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2017年08月23日

関連を強める3つの枠組み

 昨年末に「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」、いわゆる「IR(統合型リゾート施設)推進法」が成立したことにより、今年2017年が「カジノ時代」の制度的な枠組みをデザインする1年になることが決まりました。制度、すなわち枠組みは、政治家と官僚が法的に定義し組織を構築することによって、実体化されていきます。通常国家と臨時国会の狭間の時期である今の8月は、秋の臨時国会に向けて準備する期間となっています。

 「カジノ時代」の新しい枠組みでは、IR・カジノの枠組みに、パチンコ業界の枠組みと、いわゆる「ギャンブル等依存症」対策の枠組みとが、重層的に絡み合います。

 IR・カジノの枠組みでは、閣僚によって構成される「特定複合観光施設区域整備推進本部」および専門家によって構成される「特定複合観光施設区域整備推進会議」による約7カ月間にわたる制度の構築作業が「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ〜「観光先進国」の実現に向けて〜」として結実しました。この「取りまとめ」は特定複合観光施設区域整備推進本部事務局によって8月1日より首相官邸のホームページで公開されており、パブリックコメント(国民からの意見募集)が31日まで実施されています。また、この「取りまとめ」に関して全国9カ所で説明・公聴会が開催されています。この「取りまとめ」が、秋の臨時国会で提出される見込みの「IR実施法」案のたたき台となり、同法案がIR・カジノのグランドデザインについて規定し記述することになります。日本版IR・カジノの方向性は、「特定複合観光施設区域整備推進本部」の本部長を務めた安倍総理による4月4日の発言のなかに、すでに示されていました。モデルはシンガポールのIRとなっており、それよりも「クリーンなカジノを実現するため世界最高水準のカジノ規制を導入する」ことが目指されます。この政府方針が、これからのパチンコ業界の枠組みと「ギャンブル等依存症」対策の枠組みも規定します。

 パチンコ業界は、パチンコの釘調整とパチスロの「設定」によって利益を調整するシステムを整え、換金を前提とした「特殊景品」と「景品交換所」と呼ばれる古物商による「三店方式」によって換金を可能とするシステムを整えました。その結果、所管法令である「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)」の企図した「遊技」の枠組みを逸脱する志向性を先鋭化させてきた経緯があり、実態としては「ギャンブル」に極めて近しい業態となっています。その結果、所管省庁である警察庁はパチンコ産業の実態を、これからつくられる予定のカジノと競合しない内容に修正する必要に迫られました。同庁は7月11日より「風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律及び遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則の一部を改正する規則」案を公示してパブリックコメント(意見)の募集を開始し、8月9日に締め切りました。これは規則ですので、国会での審議を経ずに公布されることになります。

 昨年末、IR・カジノの導入について審議する過程で政治家と国民・マスコミから強い懸念が示されたのが「依存症」の問題でした。パチンコ・パチスロと、競馬・競艇(モーターボート)・競輪・オートレースの公営競技を既存の「ギャンブル等」としてまとめ、これらへの「依存」問題対策を構築する必要がありました。昨年末の「IR推進法」についての審議の過程で衆議院は、カジノに関する規制だけでなく「ギャンブル等依存症患者への対策を抜本的に強化すること」を定める附帯決議を行っています。その後、少なくとも表面化した政治的な動きとしては、「ギャンブル等依存症」への対策がIR・カジノの整備に関する動きに先行しました。IR推進法の成立直後には「ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議」が動き出し、本年3月31日には「ギャンブル等依存症対策の強化に関する論点整理」が公表されました。ここでは、ぱちんこ(パチンコ・パチスロ)と公営競技の「依存症対策」について現状と課題が「整理」されて示され、それが実質的に今後のこの領域における政策方針となりました。通常国会最終盤の6月13日には自民・公明両与党から「ギャンブル等依存症対策基本法」案が提出されましたが、国会はすぐに会期末を迎え、法案は次の国会へ継続審議のため送られました。

 IR・カジノの枠組み、パチンコ業界の枠組み、そして「ギャンブル等依存症」対策の3つの枠組みの構築は同時にすすんでおり、それぞれ密接に連動しています。そのどれかの枠組みだけにフォーカスして、ほかの2つの枠組みを見ないのであれば、変化の本質を見誤ることになるでしょう。まず、IR・カジノを日本に実現させるという究極的な政治目標があり、そのためにパチンコ業界での規制強化と「ギャンブル等依存症」対策は行われます。そして日本版IR・カジノには、シンガポールのIR・カジノというモデルが存在します。これまで警察庁が排他的に所管してきたパチンコ産業の業界関係者や、主に厚生労働省の所管領域に含まれる「ギャンブル等依存症」の問題に関わってきたいわゆる「依存症業界」の援助職者など業界関係者は、それぞれ各業界が育んできた方法論と枠組みから業界の外部と接してきました。ですがIR・カジノの実現に向けて政府が一丸となって動いている現在、パチンコ業界と依存業界は複眼的な視野を持って社会と対峙し、カジノ時代に向けて新たな体制を再構築する必要に迫られています。

 本年度中にも「ギャンブル等依存症対策基本法」と「IR実施法」が成立し、風営法の規則改正が施行される見込みです。これら法令の成立により、新時代の制度的な枠組みは確定します。新しい枠組みの内側へは、組織や施設、人材が投入されて、新時代の業界が実態を備えることになります。事態が動き始めてすでに8カ月目。すでに、新しい枠組みに向けたいくつかの動きが、民間レベルでも表面化しはじめています。

AGFJ 平田
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2017年07月13日

規則改正案に対する意見(パブリックコメント)の受付が始まりました

 警察庁は7月11日より、パチンコ産業を定義し規制する規則の改正を決定し、改正案に対する意見をパブリックコメント制度に則って開始しました。改正案には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則及び遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則の一部を改正する規則案」という題名が付けられています。警察庁HPの「お知らせ」「パブリックコメント」から確認することができます(http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=120170011)。意見提出の締切日は8月9日です。

 改正案を見ると、改正の狙いとして、カジノを含むIRの導入を決めたIR推進法についての国会審議において「ギャンブル等依存症」への対策が付帯決議に明記されたことなどによって、ぱちんこ(パチンコ・パチスロ)の「過度な遊技の抑制を図る」ことが挙げられています。では、「過度な遊技の抑制を図る」ためにどうすればいいのか。立場によって意見は異なるとは思いますが、この改正案には警察庁の見解が示されています。

 パブリックコメント制度によって、すでに公表されている改正案に修正が入ることがあるのかどうかはわかりません。とはいえ今回のパブリックコメントは、改正の目的が本当に「過度な遊技の抑制を図る」ためであるならばどのような対策が有効なのか、多くの人があらためて考える機会として機能するのではないでしょうか。

 この規則改正については多くのマスコミ報道があったことからも、業界関係者だけでなく社会一般からの関心も非常に高いと推測されます。そのため今回のパブリックコメントでは、多くの意見が集まることでしょう。もし可能であるならば、集まった意見が閲覧可能な状態とされ、さまざまな意見が存在するということが明らかになることによって、依存問題とは何か、そして社会にとってぱちんこの望ましい在り方はどのようなものなのかについて、広く国民的に議論するきっかけとなればと思います。

AGFJ 平田
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2017年06月29日

新たなニューズレター「安心娯楽通信」を発刊しました

 RSNでは、電話相談業務を開始したのとほぼ同時期に、月刊のニューズレターとして「さくら通信」を発行してきました。6月22日付の最新刊は122号・6月号です。このニューズレターは、RSNの支援者や関係者、賛助会員へ、印刷して郵送されています。郵送先は基本的に、依存・アディクションの問題に関わる団体や個人のみとなっており、誰でもアクセスできるようにはなっていない、クローズドな媒体であると言うことができます。

 そしてこのたび、RSNは新しい月刊のニューズレター「安心娯楽通信」を発刊しました。創刊号の発行日を「さくら通信」6月号と合わせて6月22日としました。こちらはRSNのHPから誰でもダウンロードが可能な状態でアップされており、オープンな媒体であると言えます。タイトルの元となった「安心娯楽宣言」は、パチンコ業界の14団体により構成されるパチンコ・パチスロ産業21世紀会によって一般社会に向け2015年に出された、次のようなメッセージです。

 「パチンコ・パチスロ産業21世紀会は、パチンコ・パチスロを国民の皆様に愛される安心娯楽として発展させることを宣言します。」

 主な読者層を、依存・アディクションの問題に関わる団体や個人としてきた「さくら通信」とは違って、「安心娯楽通信」ではこの問題に本格的に参入することになった(参入せざるを得なくなった)パチンコ業界の団体と個人に設定しています。2017年に入って特に、依存問題への対策がパチンコ業界に求められるようになりました。このような困難な時にこそ、「安心娯楽宣言」の精神を思い出していただきたい、そしてその取組を継続していただきたいとの願いも込めて、新たな媒体のタイトルに引用しました。

 創刊号の内容は、1ページ「発刊にあたって――」、2ページ「西村直之代表の、ちょっとレクチャー 「安心パチンコ・パチスロアドバイザー」制度について」、3ページ「連続講座 パチンコ・パチスロ依存問題 依存問題対策への政治的要請と社会的要請」、4ページ「依存問題対策の一環として車内放置事故防止の徹底を」+「ホール企業からの出向 経過報告 RSNからホールの現場へ」となっています。ダウンロードは、RSNのHP(http://rsn-sakura.jp)からリンクする専用ページ(http://rsn-sakura.jp/anshingorakutsushin.html)から可能です。ぜひご一読ください。

AGFJ 平田
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2017年06月09日

宮古島に行ってきました

 先週末、宮古島に行ってきました。最初に行ったのが15年ほど前。次が3年前。今回は3回目でした。さとうきび畑が広がる平坦な島で、海の透明度が高く、ダイバーに人気の島です。

 今回の最初の感想は、「道路が空いている」ということです。沖縄本島の那覇とその周辺にいて、慢性的な渋滞に慣れてしまっているので、沖縄なのに中心市街地である平良でも車が少ないことに、まず驚きました。島の道路事情は、来るたびに良くなっています。2015年1月には、離島だった伊良部島とも3.5キロの橋でつながりました。島のドライブは快適でした。

 次に感じたのは、平良の中心市街地が賑やかになったということ。2泊しましたが2泊とも、夕食の場所をさがすのに苦労しました。予約しておかないと入れない、満員のお店が多かったのです。夜でも明かりのついている、都会的で食事単価の高そうな店舗が多くありました。最初に平良を訪れた時、店舗数が少なく寂れている、という印象を受けていました。車社会の沖縄・宮古で、夜に中心市街地が栄えるようになったのは、観光地化がすすんだ直接の影響でしょう。夕方、タクシーに乗った時、運転手さんにお勧めのお店を訊ねると、ファミリーレストランの「ジョイフル」を真面目に勧められたのは、私が観光客には見えなかったからかもしれません。

 東京、大阪、名古屋から直行便が飛び、中国・台湾からのクルーズ船も寄港するようになった宮古島ですが、人口はむしろ緩やかに減少しつづけています。沖縄県全体で人口は増えていますが、県内でも増えている地域と減っている地域に、くっきりと二分されます。人口が増えているのは、那覇とその周辺のベッドタウン、そして石垣市です。名護市より北部の国頭郡や、石垣島以外の離島では、むしろ減少しています。宮古島では、人口は増えていませんが、道路は良くなり、観光客が増え、観光バブルが起きています。最初に宮古島に来たのはひとつの宮古島市へと合併する前であり、平良市以外に、下地町、城辺町、上野村、伊良部町があって、町村ごとの個性がまだありました。伊良部島とも橋でつながった今回には、平良への経済活動の集中が一層すすんでいるという印象を受けました。観光バブルの恩恵にも、地域ごとに濃淡があると思われます。

 沖縄では、さまざまなレベルの中央と周辺の対比について意識させられる機会が多いのですが、今回の宮古島でも強く意識しました。

AGFJ 平田
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2017年05月25日

減らない相談電話の件数

 RSNへの相談電話の件数が減りません。

 1カ月間の相談件数は、2017年1月には171件(全商協RSN支援室を含む、以下同じ)でした。昨年末、IR・カジノ導入の前提として「ギャンブル等依存症」への対策強化が政府の方針として定められ、本年に入ってぱちんこ業界にも依存問題への対策強化が求められるようになりました。その一環としてホールにおけるRSN啓発ポスターの貼付が徹底されたことなどにより、2月から相談電話の件数が急増し、2月には348件、3月には473件となりました。4月には439件と、前月比で減少しましたが、これはかかってくる相談電話の数が減ったからというよりも、相談員が受けることのできる電話の数がすでに上限に達しているからであったと思われます。

 5月の初週はゴールデンウィーク期間となっていたため、相談電話を受け付けていませんでした。それでも5月は24日までに333件の相談電話を受け付けました。活動日は13日間でしたので、1日あたり25.6件です。同日以降の5月中の活動日は残り5日間。このペースがつづけば、3カ月連続での400件超えは確実です。

 私たちは2月に電話相談が急増して以降、ゴールデンウィークが終わってしばらく時間が経てば件数は下降に転じるだろうという見通しを立てていました。というのも、過去のポスター貼付やポケットティッシュ配布による反応も、効果が持続した期間は限定的であり、しばらくすれば相談件数は減少し始めたからです。また、最近のパチンコホールの稼働状況は冷え込んでいて客離れは顕著であると、ぱちんこ業界の関係者から何度か耳にする機会があったからです。

 5月から、ホール企業から2名の社員が沖縄のRSN事務所に出向しています。相談員は、出向社員の研修期間を早々に切り上げて、相談電話に出てほしいと願うようになっています。

AGFJ 平田

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2017年05月10日

ホールからのRSN出向、スタート

 ぱちんこホール企業の全国組織である全日遊連は5月より、ホール企業からRSNへの社員の出向をスタートさせました。3カ月間の予定で、サンキョー株式会社より中島大輔さん、光明興業株式会社より原田修士さんの2名がいらっしゃっており、さっそく相談員から電話相談のノウハウを学んでいます。ぱちんこ業界によるパチンコ・パチスロへの依存問題に対する取組み強化の一環です。

 政府は、昨年末の「IR推進法」の成立と、本年中に予定する「IR実施法」の上程をにらんで、パチンコ・パチスロを含む「ギャンブル等」の依存問題対策の強化を打ち出しました。政府の方針を受けてぱちんこ業界は今年に入り、業界自身による依存問題への対策強化を検討してきました。その過程で全日遊連は、@RSNの相談機能充実を主な目的としてホールからRSNへの人員の出向、Aホールへの「安心パチンコ・パチスロアドバイザー」の設置、Bアドバイザー育成に向けた講習会の開催、CアドバイザーがRSNや精神保健福祉センター等にお客様を誘導する際などに利用するリーフレットのホールへの設置、以上の4項目について取組むことを理事会で決議しています。

 政府が内閣に設置したギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議は3月31日に「ギャンブル等依存症対策の強化に関する論点整理」を決定・公表しています。そのなかでは、ぱちんこにおける依存対策の現状と課題のひとつとして、「RSNの相談者に対して、今後よりきめ細かな対応を行うためには、相談体制を更に充実させる必要がある」ことが指摘されていました。

AGFJ 平田
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2017年04月12日

「相談体制を更に充実させる必要がある」との指摘

 昨年12月に「特定複合観光施設区域の整備の推進に関す法律」(通称「IR推進法」)が成立・施行されてから、ぱちんこを含む「ギャンブル等」の依存問題対策が、内閣、政党、関係省庁、業界団体、事業者の各レベルそれぞれに急ピッチですすめられてきました。3月31日に関係閣僚によって構成される「ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議」が「ギャンブル等依存症対策の強化に関する論点整理」(以下「論点整理」)を決定し公表したことにより依存問題対策は、政策を策定する段階から政策を実施し具現化させていく段階へと移行したと言えるでしょう。年度が変わるちょうどその日にひとつの区切りを迎えたというところに、お役所的なスケジュール観を感じます。大雑把に言って、1月はブレーン的な立場の人が素案の策定を行い水面下での調整を図る時期、2月は事業者、業界団体、関係省庁など、各レベルで政策を取りまとめる時期、3月は各レベル間をまたいだ調整を行い、政党、政府に上げていく時期であったのかな、という印象を受けています。

 「論点整理」は、「第1 はじめに」、「第2 我が国におけるギャンブル等依存症の実態」、「第3 競技施行者・事業者の取組」、「第4 医療・回復支援」、「第5 学校教育、消費者行政等における対応」の5章で構成されています。「第2」において、政府機関である日本医療研究開発機構の委託を受けた久里浜医療センターによる「ギャンブル等依存症」についての平成28年度予備調査の結果が示され、過去12カ月以内の「ギャンブル等依存症が疑われる者」の割合を成人の0.6%と推計しています。「第3」では、競馬・競輪・オートレース・モーターボート競走の公営競技とぱちんこについて、依存問題対策の「現状」と「課題」が指摘されました。

 ぱちんこの依存問題対策では、取り組むべき次の8項目について、それぞれ「現状」と「課題」が示されました。この認識は、ぱちんこ業界の所管官庁である警察庁の認識と見なすべきであると思われます。
   1 リカバリーサポート・ネットワークの相談体制の強化及び機能拡充
   2 18歳未満の者の営業所への立入禁止の徹底
   3 本人・家族申告によるアクセス制限の仕組みの拡充・普及
   4 出玉制限の基準等の見直し
   5 出玉情報等を容易に監視できる遊技機の開発・導入
   6 営業所の管理者の業務として依存症対策を義務付け
   7 業界の取組について評価・提言を行う第三者機関の設置
   8 ぱちんこ営業所における更なる依存症対策
 1番目に挙げられたRSNの「課題」を、以下に引用します。
「RSNの相談者に対して、今後よりきめ細かな対応を行うためには、相談体制を更に充実させる必要がある。
 また、ぱちんこへの依存問題を抱える人の家族に対して、RSNにおいて相談を受け付けていることについての情報発信を強化し、家族からの相談をより多く受け付けられるようにする必要がある。
 加えて、RSNの相談者等のぱちんこへの依存問題を抱える人に、ぱちんこへの依存問題に詳しい専門医等を紹介することにより、専門性の高い医療等をより身近で受けられる環境を作る必要があるほか、ぱちんこへの依存問題を抱える人は、経済的な問題等も併せて抱えていることが多いことから、それらの問題に対する相談体制についても整備することが望ましいと考えられる。」

 政府から一NPOが活動にあたっての「課題」を指摘されるという事態には、そのスタッフの末席にたまたま連なった者としても、不思議な感慨を憶えます。そして、ただ感慨を覚えているだけではなく、専門的なトレーニングを積んだ電話相談員の補充を前提とする「相談体制を更に充実させる」ということは容易ではないと、気づいています。
 ぱちんこ業界ジャーナリストのPOKKA吉田氏は、自身の発行する業界誌『SEQUENCE』4月号で、「RSN機能強化」は「一朝一夕にできるようなことではない」として、次のように書いています。
「RSNの機能強化ということで、人員をホール企業から派遣していこう、ということを全日遊連は考えているが、派遣された人員がすぐに戦力になるとは限らないため、スタッフ教育という視点も重要になる。期間を四半期で区切り、四半期ごとに2名ほどの派遣を全日遊連は想定しており、まずは4月から阿部理事長の会社のスタッフが派遣されることになっているという。スタッフを派遣する企業やその人の適正、そして教育などの視点から、では派遣が始まったらRSNが即機能強化となるのかどうか、そこはある程度時間はかかることだろう。」

 「相談体制をさらに充実させる」ためにホール企業よりいらっしゃる方は、その企業からの出向としてRSNに着任されると聞いています。RSNの事務所では、3月中に相談員のいる島(ブロック)の机を、4席から6席に増やしました。また、つい先日、相談回線を4ラインから6ラインに増やし、電話機も増やしています。いつからいらっしゃるのかまだわかりませんが、事務所が賑やかになりそうです。

AGFJ 平田
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2017年03月15日

依存問題対策推進会議がまとめた強化案に示された「RSN機能の充実」

 パチンコ業界の業界団体のひとつ、一般社団法人日本遊技関連事業協会(日遊協)が発行する『日遊協』の3月号に、「依存問題対策推進会議」がまとめた、業界による依存(のめり込み)問題対策の強化案が紹介されました。記事によれば、業界団体の全日遊連、日遊協、日工組、日電協、全商協、回胴遊商の6団体は2月24日、パチンコ業界の依存問題対策の強化を緊急協議するため、「依存問題対策推進会議」を開催。会議にはパチンコ・パチスロ21世紀会を構成する残る業界団体の自工会、補給組合、メダル工業会、同友会、余暇進、PCSA、認証協、PSAがオブザーバー参加しました。会議には全日遊連、日遊協、日工組、日電協よりそれぞれ強化案が提出され、協議のうえ強化案をまとめる作業が行われました。

 強化案の概要は、「1 RSN機能の充実」、「2 過度な遊技を抑制する一般的仕組みの構築」、「3 遊技機性能の表示機能及び管理遊技機」、「4 その他」の4項目に分かれています。記事に掲載された「1 RSN機能の充実」の内容を引用します。

(1)  相談員の増員、相談時間の延長等相談機能の強化:相談員の増員については、当面、ホールスタッフの出向をもって充て、しかるべき教育研修の後、沖縄のRSN及び全商協RSN支援室への配属を検討。相談時間の延長については、時間外に依存問題関連の情報等が流れるガイダンスの提供を検討。RSNの相談機能を補完するため、ホールに「安心パチンコ・パチスロ・アドバイザー」(仮称)を配置。司法書士、家計アドバイザー、ケースワーカー等による相談サービスを立ち上げ、無料相談会を各地で定期的に開催。
(2)  家族への情報発信と相談体制を強化。
(3)  専門医等の紹介を検討する。

AGFJ 平田
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2017年03月08日

最近の相談件数の急増

 RSNのニューズレター(機関紙)である「さくら通信」の3月号用に、「ホールがポスターの貼付強化に改めて本腰で乗り出し、相談件数が急増した」という記事を書いたばかりです。今週でも月曜日には特に午前中、電話が鳴りやまない状況となっていましたが、火曜日以降になって「ようやく少し落ち着いてきた」という印象を受けています。

 相談電話が急増したのは、2月の中旬以降のことでした。1月中に行われた「パチンコ・パチスロ産業賀詞交歓会」というぱちんこ業界の新年会で「依存問題が業界の最重要課題」といった主旨の警察による行政講話が行われ、業界団体からも「業界を挙げて依存問題対策に取り組む」という“宣言”が出されていたのですが、その時点ではまだ具体的な取組内容は提示されていませんでした。2月に入って警察より、RSN啓発ポスターの貼付状況をはじめとする依存問題に関するホールでの取り組みの実施状況ついて立入調査を実施するとの示唆があったようです。この時期以降に相談電話は急増。「鶴の一声」で業界が本気を出せばその瞬発力はすごい、ということを改めて実感させられました。

 AGFJ 平田
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