2017年12月28日

2017年中もお世話になりました。2018年もよろしくお願いいたします。

 RSNは今日が、2017年最後の勤務日となります。来年は、1月4日が最初の勤務日、相談電話の受付は翌5日からです。2017年中もお世話になりました。

 このブログも約4カ月、放置してしまいました。6月に月刊のニューズレター「安心娯楽通信」を創刊し、書きたいことを書くことのできる新しい媒体ができたことが最大の理由です。何か書きたいことができれば、まず「安心娯楽通信」のネタにし、次に別のウェブサイトに書いて、こちらは最後となってしまっていました。

 2017年は政府により、カジノ導入に向けた「環境整備」として、「ギャンブル等依存症」対策がすすめられた1年でした。「ギャンブル等」とは、ぱちんこ(パチンコ・パチスロ)と公営競技(競馬、モーターボート(競艇)、競輪、オートレース)を指します。ぱちんこ業界では、「ギャンブル依存症」対策の一環として遊技機の射幸性抑制のために国家公安委員会規則が改正されました。今月25日には、ぱちんこと公営競技に家族申告による排除プログラムを導入することが、政府の方針として示されました。

 政策としての「ギャンブル依存症」対策は動き始めたばかりです。ぱちんこでは、家族申告プログラム以外、私たちRSNの活動をはじめ、ある程度の積み重ねがあると言えます。ですが公営競技の取り組みは端緒に就いたばかりです。また、年の瀬に出された家族申告プログラムがぱちんこと公営競技でうまく機能するのかどうか、なんとも推測できません。

 2018年には、IR実施法案の審議が行われます。その過程では、依存問題の次の段階として、合法化のための法整備など、カジノを日本に迎え入れる準備が多面的に行われることになります。このような動きがRSNの活動にどのような影響を与えるのでしょうか。

 来年も、「ギャンブル等」の各業界にとって、各事業者にとって、各利用者・ファンにとって、そしてRSNにとって、激動の1年となりそうです。2018年もよろしくお願いいたします。

 AGFJ・平田
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2017年08月23日

関連を強める3つの枠組み

 昨年末に「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」、いわゆる「IR(統合型リゾート施設)推進法」が成立したことにより、今年2017年が「カジノ時代」の制度的な枠組みをデザインする1年になることが決まりました。制度、すなわち枠組みは、政治家と官僚が法的に定義し組織を構築することによって、実体化されていきます。通常国家と臨時国会の狭間の時期である今の8月は、秋の臨時国会に向けて準備する期間となっています。

 「カジノ時代」の新しい枠組みでは、IR・カジノの枠組みに、パチンコ業界の枠組みと、いわゆる「ギャンブル等依存症」対策の枠組みとが、重層的に絡み合います。

 IR・カジノの枠組みでは、閣僚によって構成される「特定複合観光施設区域整備推進本部」および専門家によって構成される「特定複合観光施設区域整備推進会議」による約7カ月間にわたる制度の構築作業が「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ〜「観光先進国」の実現に向けて〜」として結実しました。この「取りまとめ」は特定複合観光施設区域整備推進本部事務局によって8月1日より首相官邸のホームページで公開されており、パブリックコメント(国民からの意見募集)が31日まで実施されています。また、この「取りまとめ」に関して全国9カ所で説明・公聴会が開催されています。この「取りまとめ」が、秋の臨時国会で提出される見込みの「IR実施法」案のたたき台となり、同法案がIR・カジノのグランドデザインについて規定し記述することになります。日本版IR・カジノの方向性は、「特定複合観光施設区域整備推進本部」の本部長を務めた安倍総理による4月4日の発言のなかに、すでに示されていました。モデルはシンガポールのIRとなっており、それよりも「クリーンなカジノを実現するため世界最高水準のカジノ規制を導入する」ことが目指されます。この政府方針が、これからのパチンコ業界の枠組みと「ギャンブル等依存症」対策の枠組みも規定します。

 パチンコ業界は、パチンコの釘調整とパチスロの「設定」によって利益を調整するシステムを整え、換金を前提とした「特殊景品」と「景品交換所」と呼ばれる古物商による「三店方式」によって換金を可能とするシステムを整えました。その結果、所管法令である「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)」の企図した「遊技」の枠組みを逸脱する志向性を先鋭化させてきた経緯があり、実態としては「ギャンブル」に極めて近しい業態となっています。その結果、所管省庁である警察庁はパチンコ産業の実態を、これからつくられる予定のカジノと競合しない内容に修正する必要に迫られました。同庁は7月11日より「風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律及び遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則の一部を改正する規則」案を公示してパブリックコメント(意見)の募集を開始し、8月9日に締め切りました。これは規則ですので、国会での審議を経ずに公布されることになります。

 昨年末、IR・カジノの導入について審議する過程で政治家と国民・マスコミから強い懸念が示されたのが「依存症」の問題でした。パチンコ・パチスロと、競馬・競艇(モーターボート)・競輪・オートレースの公営競技を既存の「ギャンブル等」としてまとめ、これらへの「依存」問題対策を構築する必要がありました。昨年末の「IR推進法」についての審議の過程で衆議院は、カジノに関する規制だけでなく「ギャンブル等依存症患者への対策を抜本的に強化すること」を定める附帯決議を行っています。その後、少なくとも表面化した政治的な動きとしては、「ギャンブル等依存症」への対策がIR・カジノの整備に関する動きに先行しました。IR推進法の成立直後には「ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議」が動き出し、本年3月31日には「ギャンブル等依存症対策の強化に関する論点整理」が公表されました。ここでは、ぱちんこ(パチンコ・パチスロ)と公営競技の「依存症対策」について現状と課題が「整理」されて示され、それが実質的に今後のこの領域における政策方針となりました。通常国会最終盤の6月13日には自民・公明両与党から「ギャンブル等依存症対策基本法」案が提出されましたが、国会はすぐに会期末を迎え、法案は次の国会へ継続審議のため送られました。

 IR・カジノの枠組み、パチンコ業界の枠組み、そして「ギャンブル等依存症」対策の3つの枠組みの構築は同時にすすんでおり、それぞれ密接に連動しています。そのどれかの枠組みだけにフォーカスして、ほかの2つの枠組みを見ないのであれば、変化の本質を見誤ることになるでしょう。まず、IR・カジノを日本に実現させるという究極的な政治目標があり、そのためにパチンコ業界での規制強化と「ギャンブル等依存症」対策は行われます。そして日本版IR・カジノには、シンガポールのIR・カジノというモデルが存在します。これまで警察庁が排他的に所管してきたパチンコ産業の業界関係者や、主に厚生労働省の所管領域に含まれる「ギャンブル等依存症」の問題に関わってきたいわゆる「依存症業界」の援助職者など業界関係者は、それぞれ各業界が育んできた方法論と枠組みから業界の外部と接してきました。ですがIR・カジノの実現に向けて政府が一丸となって動いている現在、パチンコ業界と依存業界は複眼的な視野を持って社会と対峙し、カジノ時代に向けて新たな体制を再構築する必要に迫られています。

 本年度中にも「ギャンブル等依存症対策基本法」と「IR実施法」が成立し、風営法の規則改正が施行される見込みです。これら法令の成立により、新時代の制度的な枠組みは確定します。新しい枠組みの内側へは、組織や施設、人材が投入されて、新時代の業界が実態を備えることになります。事態が動き始めてすでに8カ月目。すでに、新しい枠組みに向けたいくつかの動きが、民間レベルでも表面化しはじめています。

AGFJ 平田
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2017年07月13日

規則改正案に対する意見(パブリックコメント)の受付が始まりました

 警察庁は7月11日より、パチンコ産業を定義し規制する規則の改正を決定し、改正案に対する意見をパブリックコメント制度に則って開始しました。改正案には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則及び遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則の一部を改正する規則案」という題名が付けられています。警察庁HPの「お知らせ」「パブリックコメント」から確認することができます(http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=120170011)。意見提出の締切日は8月9日です。

 改正案を見ると、改正の狙いとして、カジノを含むIRの導入を決めたIR推進法についての国会審議において「ギャンブル等依存症」への対策が付帯決議に明記されたことなどによって、ぱちんこ(パチンコ・パチスロ)の「過度な遊技の抑制を図る」ことが挙げられています。では、「過度な遊技の抑制を図る」ためにどうすればいいのか。立場によって意見は異なるとは思いますが、この改正案には警察庁の見解が示されています。

 パブリックコメント制度によって、すでに公表されている改正案に修正が入ることがあるのかどうかはわかりません。とはいえ今回のパブリックコメントは、改正の目的が本当に「過度な遊技の抑制を図る」ためであるならばどのような対策が有効なのか、多くの人があらためて考える機会として機能するのではないでしょうか。

 この規則改正については多くのマスコミ報道があったことからも、業界関係者だけでなく社会一般からの関心も非常に高いと推測されます。そのため今回のパブリックコメントでは、多くの意見が集まることでしょう。もし可能であるならば、集まった意見が閲覧可能な状態とされ、さまざまな意見が存在するということが明らかになることによって、依存問題とは何か、そして社会にとってぱちんこの望ましい在り方はどのようなものなのかについて、広く国民的に議論するきっかけとなればと思います。

AGFJ 平田
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2017年06月29日

新たなニューズレター「安心娯楽通信」を発刊しました

 RSNでは、電話相談業務を開始したのとほぼ同時期に、月刊のニューズレターとして「さくら通信」を発行してきました。6月22日付の最新刊は122号・6月号です。このニューズレターは、RSNの支援者や関係者、賛助会員へ、印刷して郵送されています。郵送先は基本的に、依存・アディクションの問題に関わる団体や個人のみとなっており、誰でもアクセスできるようにはなっていない、クローズドな媒体であると言うことができます。

 そしてこのたび、RSNは新しい月刊のニューズレター「安心娯楽通信」を発刊しました。創刊号の発行日を「さくら通信」6月号と合わせて6月22日としました。こちらはRSNのHPから誰でもダウンロードが可能な状態でアップされており、オープンな媒体であると言えます。タイトルの元となった「安心娯楽宣言」は、パチンコ業界の14団体により構成されるパチンコ・パチスロ産業21世紀会によって一般社会に向け2015年に出された、次のようなメッセージです。

 「パチンコ・パチスロ産業21世紀会は、パチンコ・パチスロを国民の皆様に愛される安心娯楽として発展させることを宣言します。」

 主な読者層を、依存・アディクションの問題に関わる団体や個人としてきた「さくら通信」とは違って、「安心娯楽通信」ではこの問題に本格的に参入することになった(参入せざるを得なくなった)パチンコ業界の団体と個人に設定しています。2017年に入って特に、依存問題への対策がパチンコ業界に求められるようになりました。このような困難な時にこそ、「安心娯楽宣言」の精神を思い出していただきたい、そしてその取組を継続していただきたいとの願いも込めて、新たな媒体のタイトルに引用しました。

 創刊号の内容は、1ページ「発刊にあたって――」、2ページ「西村直之代表の、ちょっとレクチャー 「安心パチンコ・パチスロアドバイザー」制度について」、3ページ「連続講座 パチンコ・パチスロ依存問題 依存問題対策への政治的要請と社会的要請」、4ページ「依存問題対策の一環として車内放置事故防止の徹底を」+「ホール企業からの出向 経過報告 RSNからホールの現場へ」となっています。ダウンロードは、RSNのHP(http://rsn-sakura.jp)からリンクする専用ページ(http://rsn-sakura.jp/anshingorakutsushin.html)から可能です。ぜひご一読ください。

AGFJ 平田
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2017年06月09日

宮古島に行ってきました

 先週末、宮古島に行ってきました。最初に行ったのが15年ほど前。次が3年前。今回は3回目でした。さとうきび畑が広がる平坦な島で、海の透明度が高く、ダイバーに人気の島です。

 今回の最初の感想は、「道路が空いている」ということです。沖縄本島の那覇とその周辺にいて、慢性的な渋滞に慣れてしまっているので、沖縄なのに中心市街地である平良でも車が少ないことに、まず驚きました。島の道路事情は、来るたびに良くなっています。2015年1月には、離島だった伊良部島とも3.5キロの橋でつながりました。島のドライブは快適でした。

 次に感じたのは、平良の中心市街地が賑やかになったということ。2泊しましたが2泊とも、夕食の場所をさがすのに苦労しました。予約しておかないと入れない、満員のお店が多かったのです。夜でも明かりのついている、都会的で食事単価の高そうな店舗が多くありました。最初に平良を訪れた時、店舗数が少なく寂れている、という印象を受けていました。車社会の沖縄・宮古で、夜に中心市街地が栄えるようになったのは、観光地化がすすんだ直接の影響でしょう。夕方、タクシーに乗った時、運転手さんにお勧めのお店を訊ねると、ファミリーレストランの「ジョイフル」を真面目に勧められたのは、私が観光客には見えなかったからかもしれません。

 東京、大阪、名古屋から直行便が飛び、中国・台湾からのクルーズ船も寄港するようになった宮古島ですが、人口はむしろ緩やかに減少しつづけています。沖縄県全体で人口は増えていますが、県内でも増えている地域と減っている地域に、くっきりと二分されます。人口が増えているのは、那覇とその周辺のベッドタウン、そして石垣市です。名護市より北部の国頭郡や、石垣島以外の離島では、むしろ減少しています。宮古島では、人口は増えていませんが、道路は良くなり、観光客が増え、観光バブルが起きています。最初に宮古島に来たのはひとつの宮古島市へと合併する前であり、平良市以外に、下地町、城辺町、上野村、伊良部町があって、町村ごとの個性がまだありました。伊良部島とも橋でつながった今回には、平良への経済活動の集中が一層すすんでいるという印象を受けました。観光バブルの恩恵にも、地域ごとに濃淡があると思われます。

 沖縄では、さまざまなレベルの中央と周辺の対比について意識させられる機会が多いのですが、今回の宮古島でも強く意識しました。

AGFJ 平田
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2017年05月25日

減らない相談電話の件数

 RSNへの相談電話の件数が減りません。

 1カ月間の相談件数は、2017年1月には171件(全商協RSN支援室を含む、以下同じ)でした。昨年末、IR・カジノ導入の前提として「ギャンブル等依存症」への対策強化が政府の方針として定められ、本年に入ってぱちんこ業界にも依存問題への対策強化が求められるようになりました。その一環としてホールにおけるRSN啓発ポスターの貼付が徹底されたことなどにより、2月から相談電話の件数が急増し、2月には348件、3月には473件となりました。4月には439件と、前月比で減少しましたが、これはかかってくる相談電話の数が減ったからというよりも、相談員が受けることのできる電話の数がすでに上限に達しているからであったと思われます。

 5月の初週はゴールデンウィーク期間となっていたため、相談電話を受け付けていませんでした。それでも5月は24日までに333件の相談電話を受け付けました。活動日は13日間でしたので、1日あたり25.6件です。同日以降の5月中の活動日は残り5日間。このペースがつづけば、3カ月連続での400件超えは確実です。

 私たちは2月に電話相談が急増して以降、ゴールデンウィークが終わってしばらく時間が経てば件数は下降に転じるだろうという見通しを立てていました。というのも、過去のポスター貼付やポケットティッシュ配布による反応も、効果が持続した期間は限定的であり、しばらくすれば相談件数は減少し始めたからです。また、最近のパチンコホールの稼働状況は冷え込んでいて客離れは顕著であると、ぱちんこ業界の関係者から何度か耳にする機会があったからです。

 5月から、ホール企業から2名の社員が沖縄のRSN事務所に出向しています。相談員は、出向社員の研修期間を早々に切り上げて、相談電話に出てほしいと願うようになっています。

AGFJ 平田

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2017年05月10日

ホールからのRSN出向、スタート

 ぱちんこホール企業の全国組織である全日遊連は5月より、ホール企業からRSNへの社員の出向をスタートさせました。3カ月間の予定で、サンキョー株式会社より中島大輔さん、光明興業株式会社より原田修士さんの2名がいらっしゃっており、さっそく相談員から電話相談のノウハウを学んでいます。ぱちんこ業界によるパチンコ・パチスロへの依存問題に対する取組み強化の一環です。

 政府は、昨年末の「IR推進法」の成立と、本年中に予定する「IR実施法」の上程をにらんで、パチンコ・パチスロを含む「ギャンブル等」の依存問題対策の強化を打ち出しました。政府の方針を受けてぱちんこ業界は今年に入り、業界自身による依存問題への対策強化を検討してきました。その過程で全日遊連は、@RSNの相談機能充実を主な目的としてホールからRSNへの人員の出向、Aホールへの「安心パチンコ・パチスロアドバイザー」の設置、Bアドバイザー育成に向けた講習会の開催、CアドバイザーがRSNや精神保健福祉センター等にお客様を誘導する際などに利用するリーフレットのホールへの設置、以上の4項目について取組むことを理事会で決議しています。

 政府が内閣に設置したギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議は3月31日に「ギャンブル等依存症対策の強化に関する論点整理」を決定・公表しています。そのなかでは、ぱちんこにおける依存対策の現状と課題のひとつとして、「RSNの相談者に対して、今後よりきめ細かな対応を行うためには、相談体制を更に充実させる必要がある」ことが指摘されていました。

AGFJ 平田
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2017年04月12日

「相談体制を更に充実させる必要がある」との指摘

 昨年12月に「特定複合観光施設区域の整備の推進に関す法律」(通称「IR推進法」)が成立・施行されてから、ぱちんこを含む「ギャンブル等」の依存問題対策が、内閣、政党、関係省庁、業界団体、事業者の各レベルそれぞれに急ピッチですすめられてきました。3月31日に関係閣僚によって構成される「ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議」が「ギャンブル等依存症対策の強化に関する論点整理」(以下「論点整理」)を決定し公表したことにより依存問題対策は、政策を策定する段階から政策を実施し具現化させていく段階へと移行したと言えるでしょう。年度が変わるちょうどその日にひとつの区切りを迎えたというところに、お役所的なスケジュール観を感じます。大雑把に言って、1月はブレーン的な立場の人が素案の策定を行い水面下での調整を図る時期、2月は事業者、業界団体、関係省庁など、各レベルで政策を取りまとめる時期、3月は各レベル間をまたいだ調整を行い、政党、政府に上げていく時期であったのかな、という印象を受けています。

 「論点整理」は、「第1 はじめに」、「第2 我が国におけるギャンブル等依存症の実態」、「第3 競技施行者・事業者の取組」、「第4 医療・回復支援」、「第5 学校教育、消費者行政等における対応」の5章で構成されています。「第2」において、政府機関である日本医療研究開発機構の委託を受けた久里浜医療センターによる「ギャンブル等依存症」についての平成28年度予備調査の結果が示され、過去12カ月以内の「ギャンブル等依存症が疑われる者」の割合を成人の0.6%と推計しています。「第3」では、競馬・競輪・オートレース・モーターボート競走の公営競技とぱちんこについて、依存問題対策の「現状」と「課題」が指摘されました。

 ぱちんこの依存問題対策では、取り組むべき次の8項目について、それぞれ「現状」と「課題」が示されました。この認識は、ぱちんこ業界の所管官庁である警察庁の認識と見なすべきであると思われます。
   1 リカバリーサポート・ネットワークの相談体制の強化及び機能拡充
   2 18歳未満の者の営業所への立入禁止の徹底
   3 本人・家族申告によるアクセス制限の仕組みの拡充・普及
   4 出玉制限の基準等の見直し
   5 出玉情報等を容易に監視できる遊技機の開発・導入
   6 営業所の管理者の業務として依存症対策を義務付け
   7 業界の取組について評価・提言を行う第三者機関の設置
   8 ぱちんこ営業所における更なる依存症対策
 1番目に挙げられたRSNの「課題」を、以下に引用します。
「RSNの相談者に対して、今後よりきめ細かな対応を行うためには、相談体制を更に充実させる必要がある。
 また、ぱちんこへの依存問題を抱える人の家族に対して、RSNにおいて相談を受け付けていることについての情報発信を強化し、家族からの相談をより多く受け付けられるようにする必要がある。
 加えて、RSNの相談者等のぱちんこへの依存問題を抱える人に、ぱちんこへの依存問題に詳しい専門医等を紹介することにより、専門性の高い医療等をより身近で受けられる環境を作る必要があるほか、ぱちんこへの依存問題を抱える人は、経済的な問題等も併せて抱えていることが多いことから、それらの問題に対する相談体制についても整備することが望ましいと考えられる。」

 政府から一NPOが活動にあたっての「課題」を指摘されるという事態には、そのスタッフの末席にたまたま連なった者としても、不思議な感慨を憶えます。そして、ただ感慨を覚えているだけではなく、専門的なトレーニングを積んだ電話相談員の補充を前提とする「相談体制を更に充実させる」ということは容易ではないと、気づいています。
 ぱちんこ業界ジャーナリストのPOKKA吉田氏は、自身の発行する業界誌『SEQUENCE』4月号で、「RSN機能強化」は「一朝一夕にできるようなことではない」として、次のように書いています。
「RSNの機能強化ということで、人員をホール企業から派遣していこう、ということを全日遊連は考えているが、派遣された人員がすぐに戦力になるとは限らないため、スタッフ教育という視点も重要になる。期間を四半期で区切り、四半期ごとに2名ほどの派遣を全日遊連は想定しており、まずは4月から阿部理事長の会社のスタッフが派遣されることになっているという。スタッフを派遣する企業やその人の適正、そして教育などの視点から、では派遣が始まったらRSNが即機能強化となるのかどうか、そこはある程度時間はかかることだろう。」

 「相談体制をさらに充実させる」ためにホール企業よりいらっしゃる方は、その企業からの出向としてRSNに着任されると聞いています。RSNの事務所では、3月中に相談員のいる島(ブロック)の机を、4席から6席に増やしました。また、つい先日、相談回線を4ラインから6ラインに増やし、電話機も増やしています。いつからいらっしゃるのかまだわかりませんが、事務所が賑やかになりそうです。

AGFJ 平田
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2017年03月15日

依存問題対策推進会議がまとめた強化案に示された「RSN機能の充実」

 パチンコ業界の業界団体のひとつ、一般社団法人日本遊技関連事業協会(日遊協)が発行する『日遊協』の3月号に、「依存問題対策推進会議」がまとめた、業界による依存(のめり込み)問題対策の強化案が紹介されました。記事によれば、業界団体の全日遊連、日遊協、日工組、日電協、全商協、回胴遊商の6団体は2月24日、パチンコ業界の依存問題対策の強化を緊急協議するため、「依存問題対策推進会議」を開催。会議にはパチンコ・パチスロ21世紀会を構成する残る業界団体の自工会、補給組合、メダル工業会、同友会、余暇進、PCSA、認証協、PSAがオブザーバー参加しました。会議には全日遊連、日遊協、日工組、日電協よりそれぞれ強化案が提出され、協議のうえ強化案をまとめる作業が行われました。

 強化案の概要は、「1 RSN機能の充実」、「2 過度な遊技を抑制する一般的仕組みの構築」、「3 遊技機性能の表示機能及び管理遊技機」、「4 その他」の4項目に分かれています。記事に掲載された「1 RSN機能の充実」の内容を引用します。

(1)  相談員の増員、相談時間の延長等相談機能の強化:相談員の増員については、当面、ホールスタッフの出向をもって充て、しかるべき教育研修の後、沖縄のRSN及び全商協RSN支援室への配属を検討。相談時間の延長については、時間外に依存問題関連の情報等が流れるガイダンスの提供を検討。RSNの相談機能を補完するため、ホールに「安心パチンコ・パチスロ・アドバイザー」(仮称)を配置。司法書士、家計アドバイザー、ケースワーカー等による相談サービスを立ち上げ、無料相談会を各地で定期的に開催。
(2)  家族への情報発信と相談体制を強化。
(3)  専門医等の紹介を検討する。

AGFJ 平田
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2017年03月08日

最近の相談件数の急増

 RSNのニューズレター(機関紙)である「さくら通信」の3月号用に、「ホールがポスターの貼付強化に改めて本腰で乗り出し、相談件数が急増した」という記事を書いたばかりです。今週でも月曜日には特に午前中、電話が鳴りやまない状況となっていましたが、火曜日以降になって「ようやく少し落ち着いてきた」という印象を受けています。

 相談電話が急増したのは、2月の中旬以降のことでした。1月中に行われた「パチンコ・パチスロ産業賀詞交歓会」というぱちんこ業界の新年会で「依存問題が業界の最重要課題」といった主旨の警察による行政講話が行われ、業界団体からも「業界を挙げて依存問題対策に取り組む」という“宣言”が出されていたのですが、その時点ではまだ具体的な取組内容は提示されていませんでした。2月に入って警察より、RSN啓発ポスターの貼付状況をはじめとする依存問題に関するホールでの取り組みの実施状況ついて立入調査を実施するとの示唆があったようです。この時期以降に相談電話は急増。「鶴の一声」で業界が本気を出せばその瞬発力はすごい、ということを改めて実感させられました。

 AGFJ 平田
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2017年02月22日

「けものフレンズ」からの誘惑

 ぱちんこへの依存(のめり込み、遊技障害)の問題を巡っては、事態が現在進行形で流動的に動いている最中であり、従来あったような業界の閉鎖的な枠組みを越えてさまざまな主体が「語る権利」を確保しようと争っているという印象を受けます。そのためこのブログには、敢えてその渦中を避けて、「ぱちんこ」とも「依存」ともまったく関係のないテーマを挟んでみます。

 最近「けものフレンズ」というコンテンツを、ツイッターで知りました。最近のツイッターでは、「君は○○が得意なフレンズなんだね!」という、「けものフレンズ」に特徴的なフレーズが溢れ、ほかにも「すごーい!」や「たーのしー!」といった感嘆の感情を表す短いフレーズが、よく見られるようになっています。調べてみると、このコンテンツはメディアミックス作品であり、先行してスマホ向けゲーム版とコミック版が発表されていました。ブレイクのきっかけとなったテレビアニメ版は今年1月からのスタート。ここまでアニメ版がヒットするとは想定していなかった模様で、ゲーム版は昨年12月にサービスを終了していました(再開の噂も)。アニメ版は現在7話まですすんでいます。沖縄では残念ながら地上波での放送は無く、インターネットやケーブル回線で視聴する必要があります。

 その人気の理由を分析した論考が、すでにいくつも発表されています。最大公約数的にまとめると、2つの要因に集約できそうです。まず、思考レベルが動物並みであることをうかがわせるような、キャッチ―な発話です。登場キャラのほとんどが人間的な少女の外観となった動物たち(フレンズ)による発話であるため、人間的なまわりくどさや、状況的、説明的な配慮から自由です。そのため、単純な短いセリフがほとんどです。また、フレンズたちのセリフは、感情をストレートに表現しているというだけでなく、基本的にあらゆる現象に対して肯定的、ポジティブです。フレンズたちの会話は、動物園で動物を見ているときのような、ほんわかとした気持ちにしてくれます。そしてセリフには、ツイッターでのリピートに見られるように、中毒性があります。フレンズはまず、別のフレンズを承認し、褒めます。「君は○○が得意なフレンズなんだね!」という肯定のセンテンス、あるいは承認のセンテンスは、便利なネットスラングとしてすでに定着しました。「脳が溶ける」という評価が、この作品をうまく形容しているでしょう。

 社会現象となった2つ目の理由として挙げられるのが、1つ目とは真逆な理由となるのですが、作品の随所にダークな雰囲気が漂い、不穏な影が差し込むことです。舞台である「ジャパリパーク」についての謎を、記憶を失った「カバンちゃん」という作中に唯一登場するヒト(人間)とともに読み解いていくことが、基本的なストーリーとなっています。「カバンちゃん」以外のフレンズにはまったく反応しないロボットの「ラッキービースト」(「ボス」と呼ばれている)の存在や、謎が封印されているというパーク内の「図書館」など、世界観は謎に満ちています。また不穏な影としては、フレンズを食べてしまうという「セルリアン」という正体不明の存在や、「カバンちゃん」以外の人類が何らかのパンデミックによって滅亡してしまった可能性がほのめかされていることなどがあります。また2話目以降のエンディングでは、これまでに閉園し廃墟となった世界の遊園地のモノクロ画像が延々と流れるようになり、視聴者に衝撃を与えました。

 どこまでも能天気で陽気なメインキャラクター「サーバルちゃん」をはじめとするフレンズと、謎と闇に覆われた世界観のギャップが、このアニメが多くの人を惹きつけている魅力と言えそうです。「すごーい!」と、「サーバルちゃん」と同じテンションを維持して、萌えキャラだらけのユートピアとして「ジャパリパーク」をたのしむことも、人類滅亡後のディストピアとして「ジャパリパーク」に残された謎やヒントを拾い集めていくことも可能な仕掛けになっています。明るい要素と暗い要素の陰陽を組み合わせるという手法は、少年少女が登場するロボットアニメに青春期の孤独や体制間戦争のリアル、そして絶対的な死の影を持ち込んだ「機動戦士ガンダム」、さらに宗教や狂気の要素を加えた「新世紀エヴァンゲリオン」、そしてキュートな魔法少女たちに魔女への転生や永遠に繰り返される輪廻といった宿命を負わせた「魔法少女まどか☆マギカ」など、これまでにも繰り返されており、近年の人気アニメに共通する物語の構造であると言えそうです。

   ※※※

 陰と陽を組み合わせた、陽気であると同時にスリリングでミステリアスだというストーリー以外にも、「けものフレンズ」の人気の理由をさらにもう1点、付け加えることができそうです。それは、「カバンちゃん」以外の登場キャラクターがそれぞれ、「○○が得意」という属性を持つ「けもの」であるということです。ネットでキャッチ―なセンテンスとして「君は○○が得意なフレンズなんだね!」が反復されているということが、登場キャラクターが「けもの」であることが人気の根源にあるということを象徴的に示しています。キャラクターとしての「けもの」はブームとなっており、このブームは「属性」によるキャラクター分類と親和性があります。

 まず「けもの/ケモノ/獣」ブームについて振り返っておきます。「けもの」的な要素を持つキャラクターを愛好する人たちを「ケモナー」と呼ぶそうです。「ケモナー」にも幅があり、その愛好の対象は、限りなく獣そのままのキャラから、ヒトにネコ耳を付けただけのキャラ(耳キャラ)や着ぐるみキャラといった限りなくヒトに近いキャラまで、擬人化度、あるいはケモノ度(ケモ度)にグラデーションがあります。2012年からはケモナー向けのコミケ「けもケット」が、また2013年からは「けもの」に関する総合イベント「JMoF(Japan Meeting of Furries)」がスタートしています。

 萌えの心性(発動契機)における「属性」の重要性については、批評家の東浩紀が新書『動物化するポストモダン』で論じており、「属性」による萌え(嗜好)を「動物化」と呼んでいます。「けものフレンズ」で爆発した「ケモナー」ブームでは、キャラの「動物化」がメタファーではなく文字通りにキャラ=動物への萌えを発動させています。ここでは属性が、例えば「サーバルちゃん」のサーバルキャットといったマイナーな動物にまで細分化されている一方で、同時に「君は○○が得意なフレンズなんだね!」と単純化されます。

 世界観ではポジティブなユートピアであると同時にネガティブなディストピア、萌えの記号/属性については動物の種類(綱/目/科/属/学名)にまで細分化されると同時に、「○○が得意」と単純化される―――このような双極性や意外性という仕掛けによって視聴者は、その世界観(意味世界)をより深く探究しようという気もちにさせられます。つまり、世界観への没入(のめり込み)という誘惑です。この仕掛けこそが「けものフレンズ」の人気の秘密ではないかと想像しています。

AGFJ 平田
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2017年01月17日

これから本格化する議論を巡る環境

 敵対的な宇宙人が地球に侵攻してくるようなことがあれば、人間同士の戦争や紛争はすぐに停止され、「地球人」として共同して宇宙人に立ち向かうことになるだろうと言われています。逆説的に言えば、宇宙人でも登場しない限り、地球から戦争は無くならないだろうと言う悲観的な予言でもあります。

 この構図にパチンコ業界をあてはめてみると、パチンコ業界を「地球」として、「宇宙人」にあたるのがカジノなのかもしれません。パチンコ業界内の「国」に相当するのが、遊技機メーカーの団体である日工組や日電協、販社の団体である全商協や回胴遊商といった業界団体。パチンコホールの団体だけでも、全日遊連、日遊協(遊技機メーカーとの横断的な団体ですが)、同友会、余暇進、PCSAとあります。もはや「国」同士で縄張り争いをしている状況にはないことは明白ですが、一致団結することは可能なのでしょうか。

 依存問題から遊技業界やカジノを見ると、事態はさらに複雑です。まず、カジノの依存問題がどのようになるのか、まだ見えていない。国の依存問題政策は、カジノだけでなく公営競技やパチンコ・パチスロなど「遊技」を包括する対策案を議論する方向ですすんでいます。遊技をカジノのような賭博とは切り離して考えている遊技業界の立場からすれば、依存問題の分野に限ったとしても、カジノ業界と同じ枠組みが遊技業界にも適応されることには抵抗感があります。だからといって、世間や政府がカジノと遊技をまったくの別物と見なしてくれるものでしょうか。

 依存問題からスタートするカジノについての議論においてパチンコ業界は、「パチンコ業界(地球)のモラルある統治は平和裡に、完璧に行われている」、「領土争いのような現象は起こっていない」と、世間と政府にアピールすることはできるでしょうか。それをジャッジするのは、これまでは業界を所管する警察であり、忠誠心の強いヘビーユーザー化したファンでした。ですがこれからの議論においてジャッジを下すのは、政府・内閣であり、校正る同省をはじめ複数の省庁にまたがる省庁であり、パチンコとは縁をもたない世間一般となります。

AGFJ 平田
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2017年01月05日

閉鎖系から開放系へ

 明けましておめでとうございます。RSNでも本年の業務を本日より再開いたしました。旧年中はたいへんお世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 RSNは、「ぱちんこ依存問題相談機関」です。私たちが業務上で直接に関心を持つ領域は、パチンコ産業(パチンコ業界)と依存問題の2つとなります。依存問題の領域では、依存問題の解決を目的に活動する自助グループのほか、精神疾患として依存の問題と関わってきた精神医療(精神医学)、行政の窓口となる社会福祉・精神保健福祉の分野、そしてNPOに代表される市民活動の分野とリンクしています。さまざまな領域・分野を横断していることが大きな特徴です。私個人のことを言えば、最近の10年ほどはパチンコ産業の取材に集中していたために、依存問題の領域は新鮮で刺激的な一方で、これから勉強しなくてはならない領域や事柄が目の前に山積みとなっています。

 パチンコ産業と依存問題という2つの「業界」を見比べた場合、依存問題の「業界」は前述の通り、医療、行政、福祉、市民団体など、さまざまな分野が重層的に絡み合って成立しており、その裾野はかなり広範に拡がっていると言えます。もう一方のパチンコ業界は、他の領域からの独立性が高く、他の領域(極端に敷衍すれば一般社会)との関係性や相関性が希薄であると言えそうです。パチンコに無縁な人から見れば、パチンコ業界はブラックボックスとなっており、まるで独立した小宇宙のように見えるそうです。昨年12月のIR推進法案(カジノ法案)についての論議において、日本でいわゆる「ギャンブル依存症」をつくりだしている最大の発生源として、パチンコ産業がマスコミからだけでなく一部の依存問題「業界」からもバッシングを受けました。そのような事態を招いたのは、パチンコ産業が、多数派の日本人にとっては得体の知れない、なんだかよくわからない未知の存在となってしまっており、恐怖心や警戒心を抱かれているからであったと思われます。

 「依存症」がパチンコ産業に対するバッシングの切り口となったのは、多くの日本人にとって「パチンコ=依存症」という等式が説得力を持つようになっているという既成事実があるからでしょう。多数派の日本人にとってはパチンコに関して「依存症」以外の情報が届かない状態となっているのかもしれません。このことは、パチンコ産業からパチンコの「小宇宙」の内側にいる人たち向けの情報は出されてはいても、外側の一般社会へは効果的に発信されていなかったと解釈することができます。

 閉鎖系から開放系へと変わる――パチンコ産業の現在的な課題はここにあるのではないでしょうか。良いことも悪いことも、さまざまな情報をありのまま一般社会に向けて発信していき、乖離した小宇宙であることをやめて、一般社会へと復帰することを目指してみてはいかがでしょうか。依存の問題は、パチンコ産業を攻撃する「口実」となりました。ですがこれは、多くの人がパチンコに関して「依存症」という言葉しか情報を持たなかったからなのかもしれません。この依存の問題は、ネガティブで、しかも曖昧、かつ断片的な情報ではありますが、パチンコ産業と、その小宇宙の外にある一般社会を結びつける細い糸口ともなっています。カジノについての議論をきっかけにパチンコ「依存症」へ焦点が当てられたこの機会に、パチンコ業界は全力でこの問題に取り組み、またその取り組みを社会に発信していくべきでしょう。

 これまでもパチンコ産業は幾度もピンチをチャンスに変えてきました。業界が本気で取り組めば、今回も乗り切ることができると信じます。

AGFJ 平田
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2016年12月27日

16年の年末から17年の年始にかけてのタイミング

 カジノを含むIR(特定複合観光施設区域)推進法が15日午前1時に成立してからの2週間弱というわずかな期間に、政府は「ギャンブル依存症」対策の骨子を急ピッチでまとめています。この年末から来年初めにかけてが、パチンコ産業の未来を決める重要な時期であると考えます。このブログではその理由を述べます。

 まず前提として確認しておきたいことが2点あります。現在議論されている「ギャンブル依存症」の範囲には、カジノの「依存症」対策だけでなく、競馬、競輪、競艇などの公営競技と、パチンコ・パチスロなどの遊技への「依存症」対策が含まれているということです。このことは、「ギャンブル依存症」対策への取り組みについて言及したIR推進法の附帯決議のなかで、「カジノにとどまらず、他のギャンブル・遊技等に起因する依存症を含め、ギャンブル等依存症対策に関する国の取組を抜本的に強化する」と書かれています。この表現は文脈的に、これまで風営法により規制されてきた遊技産業の監督官庁は警察庁でしたが、今後はパチンコ産業への「依存症」についても所管するであろう厚生労働省など他の省庁が監督指導する可能性が高いことを意味しています。そのため、パチンコ産業にとってカジノに関する政策議論は、他人事ではなく直接関係することになる重要な事案です。その原型となる骨子が2017年の仕事初めまでに固まろうとしています(すでにある程度、固まっています)。

 次に確認しておきたい前提が、「ギャンブル依存症」対策の策定がIR実施法案の議論よりも優先されているということです。というのも、IR推進法の審議の過程で連立与党である公明党からの一致した賛同を得られなかったこともあり、まずは公明党が求める「ギャンブル依存症」対策を強力に推進する必要に迫られているのです。26日には「ギャンブル依存症」対策をテーマとした関係閣僚会議を開きました。また政府は年明け早々にも省庁横断組織の「ギャンブル依存症等対策室(仮称)」を設置するという情報も出ています。

 この政府が描くシナリオのまま事態が進行すれば、厚生労働省などにより定められた一元的な「ギャンブル依存症」対策の制度的な網が、遠からずパチンコ産業にもかけられることになるでしょう。その時期は、カジノの運営開始よりも先行すると予想されます。これまで風営法にある意味「守られて」、産業としての独立性を得てきたパチンコ産業が、はじめてカジノや公営競技と同じ俎上に載せられることになります。そしてこの流れは、「ギャンブル依存症」だけでなく、ゆくゆくは営業権の許認可制度(完全に合法化され、参入障壁だった風営法による縛りの消失)や税制(「カジノ税」と同じ「ギャンブル税」の一形態としての「パチンコ税」創出、つまりは税負担の強化)、そして機械や機器への規制(カジノのスロットマシンと同じ一元的な新基準の、かつて遊技機と呼ばれていた機器への適用)にまで及ぶ可能性が高い。

 パチンコ産業の「ギャンブル依存症」対策に絞れば、いまカジノの法制化にともなって新たな制度的な網がかけられようとしているのは、これまでに十分な対策を行ってきたとは政府や社会から見なされていないことが原因です。象徴的な数字が「536万人」という日本の「ギャンブル依存症」患者数です。この数字は2年以上も前の2014年8月にパチスロが主犯であると指摘されて全国紙で報じられました。ですがパチンコ産業は、それを否定する作業を怠りました。そのツケがまわってきました。カジノ推進法についての議論では、日本社会の民意を代弁したマスコミと各政党が、国会や政府に手厚い「ギャンブル依存症」対策を求めました。これまでの対策は不十分であったという社会の憤りや不安が表面化し噴出したのです。

 業界独自の対策が評価されて、これからの政策に活かされるという余地がこの段階になってもまだ残っているのか、わかりません。ですが、いま現在というタイミングは、まさに政策決定の下絵が描かれている段階です。ここでパチンコ産業が、自浄作用や産業としての自主性・自律性を社会や政府に示すことができるかどうかは、今後の産業の未来に決定的な影響を与えると考えています。

知的情報サービスセンター 平田
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2016年12月19日

IR推進法案審議がもたらした「モヤモヤ感」と、それへの来るべき解消圧力

 カジノを含む統合型リゾート(IR)の実現に筋道をつける通称「IR推進法案」、あるいは「カジノ法案」が12月15日午前1時に国会で成立しました。11月30日に唐突に審議入りしたので、審議に要した時間はわずかに半月間。カジノ研究者の木曽崇氏がツイッターで逐次コメントを交えて進行を伝えてくれたため、よく整理された形で審議を見守ることができました。

 私はこのIR法案審議の過程で、すっきりとしないモヤモヤとした違和感、あるいは不快感を覚えていました。来年の2017年には、この「モヤモヤ感」を解消しようとする圧力が、政治的・社会的に大きくなると予想します。私が感じた「モヤモヤ感」の正体に目を凝らすと、3つのレベルに腑分けできることに気づきました。1つめは国会審議の過程、2つめは「ギャンブル依存症」の前景化、3つめはパチンコ業界の反応です。

 1つめの国会審議についての感想は、私はもちろん政治分野の専門家ではありませんので、一国民としての素朴な感想です。特に民進党と公明党に対する「モヤモヤ感」となります。国会審議では、衆議院での強硬可決後、民進党には議長ポストを握る参議院内閣委員会での徹底審議と徹底抗戦が期待されていたのですが、あっけなく採決に協力してしまい、審議の打ち切りと可決を許してしまいました。また、これまでの10年以上にわたる日本へのカジノ導入を巡る議論において、推進派にとっての最大の足枷となっていた連立与党の公明党が、今回は党としての意見をまとめることができませんでした。IR推進法案の成立過程には、マスコミの常套句である「議論が尽くされぬまま」「うやむやのうちに」という表現がまさにぴったりと当てはまってしまいます。

 次の「モヤモヤ感」は、カジノ法案審議を巡る国会審議やマスコミ報道で「ギャンブル依存症」、なかでも特に「パチンコ依存症」に焦点が当てられ前景化したことに対して、となります。日本の「ギャンブル依存症」についての報道では、「厚生労働省の研究班」が発表したという「成人人口の4.8%にあたる536万人」という「罹患者(?)」に関する数字が盛んに引用されました。この「536万人」は、最大規模のファン人口を擁し売上を出している既存「ギャンブル」のパチンコ産業が主に生み出したものであると説明され、東日本大震災以来の大きな拡がりでバッシングが繰り返されました。

 最後の「モヤモヤ感」のレベルは、カジノが日本に導入されることが決まり、また「ギャンブル依存症」の主犯とされてパチンコへのバッシングが拡がったにもかかわらず、パチンコ業界がカジノ議論は他人事であるかのように泰然として構えているように見えたことです。

 以上、3つのレベルの「モヤモヤ感」のうち、RSNという「ぱちんこ依存問題相談機関」に身を置く現在の私に直接かかわってくるのは、2つめの「ギャンブル依存症」についての議論です。「ギャンブル依存症」あるいは「ぱちんこ依存問題」については、ここでの前のブログエントリーで書いたように、実態がまだよくわかっていない、いわばグレーな存在です。論者の立ち位置によって、白に近づけて無害だと主張することも、黒と見なして断罪することも許容するようなグレーな箇所を争点化することで、反対論者からの攻撃をかわす足場を確保しながら相手を攻撃することが可能となります。グレーなものを「黒」と言っても、相手は明快に反論できませんし、グレーなままに放置していたことも相手側の瑕疵となります。「536万人」という象徴的な数字を持つ「ギャンブル依存症」や「パチンコ依存症」への恐怖が、カジノという未知なるものへの漠然とした国民の恐怖とすり替えられました。

 ただし、グレーな存在は前景化した瞬間から、グレーなままでいることを許されなくなります。パチンコ産業には、釘問題と換金問題という2つのグレーだった問題があり、業界メディアにとってはいわばタブーとされ言語化が避けられてきました。メーカー側の関与が疑われた釘問題については、一連の「遊技くぎ」問題の「落としどころ」として約72万台が撤去されることにより、「黒」だったが決着済みの案件として業界的には処理されました。また換金問題については「承知している」、すなわちはっきりと「白」と見なすという政府の答弁書が、IR推進法案審議入りの直前という「偶然」と言うには出来過ぎのタイミングで国会に出されています。そのため、三店方式についてグレーな点の残るホールには、早急に「白」として実態を整備することが要請されています。IR実施法案の整備される2017年には、「ギャンブル依存症」「パチンコ依存症」に白黒の判定をつけようとする動きがすすむでしょう。すでにいくつかの機関・団体が、実態調査に着手する、あるいはすでに準備をすすめているとアナウンスしています。

 これまで、風営法下にあるパチンコ産業の所管官庁は警察庁のみでした。ですが「ギャンブル依存症」の問題は今後、パチンコなどの「遊技」と公営競技を含んだ「ギャンブル等依存」への対策として、厚生労働省が一括して所管することになりそうです。またこの「ギャンブル等依存」に関わる制度設計がIR実施法案策定の過程と一体化して行われれば、観光庁を傘下に持つ国土交通省や、民間企業を監督する経済産業省との調整も必要になると予想されます。内閣府の直轄案件であれば、国家公安委員会・警察庁とともに消費者庁が表に立つかもしれません。またさらに、財務省国税庁管轄の税体系についての議論では、カジノからの税収の延長線上に「パチンコ税」が創設される可能性もあります。パチンコ産業は、警察庁の意向をうかがうだけでは済まなくなり、日本社会全体を意識することが要請されるようになります。パチンコ産業にとってIR推進法の成立は、そのような歴史的な意味を持っていたと言えます。

知的情報サービスセンター 平田
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2016年12月07日

これまでのギャンブル依存問題が持っていた「ややこしさ」

 カジノを含む統合型リゾート(IR)を整備するための推進法案が今月6日、衆議院本会議で可決され、参議院に送られました。カジノ解禁に対する最大の懸念材料として反対派から提出されているのが、ギャンブル依存の問題です。インターネット上では、カジノそのものについての議論以上にギャンブル依存の問題について、それぞれの立場から多くの意見が提出され、モニターしているだけでたいへん勉強になりました。

 合法的な賭博としてカジノが登場すれば、それとセットでギャンブル依存の対策が登場することになります。これからギャンブル依存の問題について、本格的な議論が始まろうとしています。

 ところで、これまでギャンブル依存の問題には、いくつかの「ややこしさ」があって、活発な議論が行われにくい状況にあったと思っています。それはなぜか。私なりに整理してみます。

 まず前提として、これまで日本のギャンブルへの依存問題は、パチンコ・パチスロへの依存問題に集中していたという事実があります。パチンコ・パチスロが「ギャンブル」なのかどうかについての議論をいったん棚上げするとして、参加人口の規模でも投資金額の規模でも、パチンコ産業が圧倒的なシェアを占めてきたためです。また、競馬、競輪、競艇、オートレースと分かれ、監督官庁も設置主体もバラバラな公営競技とは違ってパチンコ・パチスロ産業は、警察庁を監督官庁として風営法により規定され、さらに業界団体が活発に活動しているという、産業としての一体性があります。そのため、日本においてこれまでギャンブル依存の問題に向かい合ってきたのは、パチンコ産業であると言えるでしょう。ここからは、これまでの日本のギャンブル依存の問題を引き受けざるを得なかったパチンコ・パチスロへの依存問題に特定して整理してみます。

 パチンコ・パチスロへの依存問題についての「ややこしさ」のひとつには、「立場表明」が求められがちだという状況があります。もうひとつの「ややこしさ」は、この問題について発言し、あるいは関わる人たちの専門分野や活動分野がさまざまであり、対話を成立させる共通言語が生まれにくかったということがあります。

 まず、「立場表明」について。発言者あるいは関与者に求められる主な「立場表明」には、@「パチンコは、刑法が禁じる『賭博』である/ない」という法解釈的な立場、A「パチンコへの依存は、『依存症』という病気(疾病)である/ない」という医療診療の見地によって分かれる立場、B「パチンコは社会にとって必要な娯楽である/ない」を問い、パチンコそのものの存在を許容するのか、あるいは社会から排除すべきと考えるのかという社会思想的な立場の3つがあります。これらの立場を鮮明にした方が議論はスムーズに始められますが、反対派からの攻撃にさらされる可能性が生まれます。

 次に発言者や関与者の専門分野や活動分野について。主な専門分野や活動分野には、@いわゆる「ギャンブル依存」(ギャンブリング障害)を診療する精神医療の専門家、すなわち精神科医、A精神保健福祉士や社会福祉士といった国家資格を得るための方法論に準拠する行政や民間の援助職者、Bギャンブル依存の問題に先進的に取り組んできたGAやギャマノンに代表される相互援助グループや家族会など市民団体、C独自の対策を行ってきたパチンコ業界の4つがあります。専門分野や活動分野が違えば、世界観や言語体系、前提となる知識が異なるために、生産的な対話は生まれにくい状況となりがちです。

 推進法が成立すれば、来年の1年をかけて、具体的な実施法が議論されることになります。そこでは当然、特に重要なテーマとして、ギャンブル依存への対策が焦点となります。議論の場では、カジノだけでなく、既存のパチンコ・パチスロや公営競技への依存対策も採りあげられることになるでしょう。この機会に、これまでのギャンブル依存の問題が抱えていた「ややこしさ」が解消されて、問題を抱える人たちに寄り添った議論が積み重ねられることを期待したいと思います。

知的情報サービスセンター 平田
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2016年12月01日

中間の言葉

 今回は(今回も?)個人的なことを書きます。すみません。

 沖縄についてのテキストで特に印象に残っているのは、大阪出身でウチナーンチュ二世の仲村清司が書いた、「沖縄は、表層だけを語ると叱られるし、深入りすると火傷する」という表現です。近著の『消えゆく沖縄』でも、このフレーズは繰り返されていました。

 この仲村と、沖縄をアジアの文脈に位置づけた旅行作家の下川裕治、そして沖縄の出版社であるボーダーインクの新城和博の3人が、沖縄をポップで軽い文体のテキストを使って表現し始めました。1990年代後半のことです。特にボーダーインクの雑誌「ワンダー」は、沖縄に来るたびに夢中になって読みました(2005年に休刊)。

 この頃に私のなかでもうひとつの「沖縄」像を形づくったのが、新崎盛暉らの雑誌「けーし風」でした。この雑誌や新崎らの本から、基地問題をはじめとする政治的、あるいは社会的な問題について学びました。仲村らのテキスト群と新崎らのテキスト群は、沖縄についての表現の「軽み」と「重み」の両極にありました。私のなかで沖縄はいつも重いテーマでありつづけています。住んでみたいけれど、うかつに触れると大火傷しそうな場所です。そんな沖縄を軽く表現して見せる仲村たちを眩しく眺めていました。

 話題をテキストから音楽に移します。音楽の世界では、内地での「沖縄ブーム」はテキストよりも5年ほど先行していました。1990年代の初め頃、照屋林賢のりんけんバンドや知名定男プロデュースのネーネーズらが、セゾン系列「WAVE」などのCDショップで当時のワールドミュージックブームの流れで紹介され、私も聴き始めました。沖縄民謡の影響を色濃く残した音楽です。

 その対極に、初期のBIGIN、安室奈美恵と彼女につづく沖縄アクターズスクール出身者の芸能界への輩出、そしてすこし後になりますが、ORENGE RANGEなどインディーズから火が付いたバンドの登場があります。沖縄らしさを意識しない(意識させない)沖縄発の音楽です。沖縄にまつわる音楽の流れにおいて、民謡と現代ポップスの中間を埋める役割を果たしたのが、宮沢和史・THE BOOMの「島唄」でした。宮沢は、この「島唄」のヒットによって沖縄の音楽界からさまざまなバッシングを受けたと、繰り返し語っています。この曲は私に、沖縄、あるいは「他者」を表象することのむずかしさ、そして可能性に、あらためて気づかせました。

 話題をテキストに戻します。何かの業界やジャンルについての発話がなされる場合、ムラ社会の住人だけに向けたジャーゴンまみれの言説か、あるいは外部向けの意味や質量をほとんど持たない表現ばかりが生み出されているような気がしています。

 ジャーゴンという言葉には、専門用語という意味のほかに、脳機能障害による失語症という意味もあるそうです。沖縄にようやく移り住むことになったのは、失語症に陥ってしまわずに、「軽み」と「重み」を強く意識せざるを得ない場所に身を置いてみて、その中間にある言葉をさがしてみたくなったから、なのかもしれないなあと思っています。

知的情報サービスセンター 平田
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2016年11月18日

増えるミッドナイト競輪

 パチンコ産業だけでなく、範囲を広げてギャンブリング・ゲーミング関連のニュースをチェックしています。最近、気になったのが、いくつかの競輪場が新たにミッドナイト競輪を始めるというニュースがつづいたことでした。

 ミッドナイト競輪とは、ナイター競輪終了後の21時から23時あるいは24時頃までに、観客をひとりも入れない競輪場で行われる競輪のこと。試合の様子をインターネットで視聴できます。2011年に小倉競輪場からスタートし、前橋、青森、高知、佐世保とつづき、今年に入って玉野と奈良でも始まりました。さらに12月13日からは武雄が、来年1月8日からは西武園がスタートします。また、日程はまだ決まっていないようですが宇都宮が1月からの開催を予定し、弥彦も2017年度の開催を目指し準備しているようです。西武園が開催するとミッドナイト競輪の場数は9場。すでにほぼ毎日通年で開催できるだけの競輪場が揃いました。開催日は、1日に2場で開催される場合を2日とカウントすると、2015年度の225日から、2016年度には上期だけで171日に増えています。無観客でレースを開催し、競輪場では車券を販売しないため、最小の経費で開催が可能です。競合する公営競技の行われていない時間に全国のファンがインターネットで投票するため、各場の収益改善に大きく貢献しています。

 競輪の売上は、ピークとなった1991年度から2013年度まで、22年間にわたって減少しつづけました。1991年度には1兆9553億円あった売上は、2013年度に6063億円にまで減少。ピーク時の約3割です。ですが2014年度に売上が23年ぶりに好転。その原因となったのが、インターネット投票でした。

 競輪の車券販売は、競輪場(本場)、「サテライト」などの名称を持つ場外(別の公営競技との相乗りを含む)、そして電話・インターネット投票の3種類に大別できます。本場での売上額と販売比率は一貫して減少しつづけており、1991年度には80.3%あった総売上額に占める販売比率を2013年度には8.6%に減らしました。場外での売上額はほぼ横ばいで推移したため、販売比率は増加しました。売上額を増加させ2014年度以降の総売上を増加させたのが電話・インターネット投票、特にインターネット投票です。極論を言えば、本場での販売比率が1割にも満たない現状が改善しないのであれば、経費削減のために日中のレースも観客を入れずインターネット中継だけにしてしまった方が利益を確保できそうです。

 賭式の高配当化も、売上額の増加に貢献しました。女性選手によるレースが注目を集めていますが、本場への来場者の増加に結び付いているかは疑問です。「賭け、配当を受け取る」という行為以外が削ぎ落されているような気がします。競輪場に足を運び、レースをほかの観客と一緒に直接観戦し、時間と空間を共有するというリアルな体験が競輪から消え去る日が、いつか来るのかもしれません。地方自治体の財政と自転車産業の振興に寄与するという目的を措くならば、レースを日本国内で開催する必要はなくなり、生身の選手による実際のレースである必要すらなくなるでしょう。私たちはどうやら、公営競技の大きな転換期に居合わせているようです。

知的情報サービスセンター 平田
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2016年11月07日

沖縄にも秋到来

 最近、夜や明け方の最低気温が20度から22度あたりまで下がるようになりました。日差しが無く、風の強い日には肌寒ささえ感じます。2週間前までクーラーをつけて寝ていたのですが、先週には窓を閉めて寝るようになり、この週末に急いで掛け布団を出しました。

 気温の変化とともに、空気が乾燥しました。これまでは毎日、湿度が高くジメジメとしていたのですが、最近はからりと晴れわたる日が多くなり、洗濯物がよく乾きます。日差しは相変わらず強烈ですが、湿度が低いため実際の気温よりも涼しく感じます。

 10月には毎週末のように各地で祭りが開催されていました。旧暦では9月、秋祭りです。ですが10月に入っても下旬まで夏の気候がつづいたために、秋祭りという実感は湧きませんでした。いま住んでいる首里の祭りは11月3日、文化の日にありました。首里城やその周辺では日中、「琉球王朝祭り」として再現した衣装を着た人たちが練り歩く時代行列が行われました。私たちは夜を待って、中学校の校庭で行われた各町の旗頭の競演(ガーエー)と獅子舞を見に行きました。この日まで毎夜、近所の公民館で旗頭の練習が行われていて、その太鼓と鐘の音、そして掛け声が風にのって聞こえていました。そのこともあって、自分たちの住む町の旗頭が登場するとうれしくなりました。

 沖縄には「ミーニシ」という季語があるそうです。漢字では「新北風」。夏の間の湿気を多く含んだ南風(ハエあるいはパイカジ)から突然、北風(ニシ)に変わることを指しています。ある日を境に風の向きが変わるというのは、海に囲まれた島ならではの気候の変化だと思います。風の変化と、町内の秋祭り。沖縄にも先週、ようやく秋が来ました。

知的情報サービスセンター 平田
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2016年10月24日

『セントラルパーク津久見店』での取材

 先週の木曜日と金曜日の2日間、取材のため大分県津久見市を訪れました。沖縄から津久見へは、那覇空港から福岡空港までの空路とJR博多駅からの陸路を合わせて約6時間。博多駅から特急「ソニック」で終点の大分駅まで行き、宮崎行きの特急「にちりん」に乗り換えてさらに40分ほどかかります。車窓からは収穫直前の稲穂が黄金色に輝いて見え、また町のあちこちにはキンモクセイの甘い香りが漂っていました。沖縄ではまだ最高気温が30度を超える日が多いのですが、大分の秋はすっかり深まっていました。

 津久見市は大分県の南東部にあり、豊後水道に面しています。北に臼杵市と、南に佐伯市と接しています。基幹産業としては、天然の良港があり、かつ石灰岩の産地であることからセメント工業が発展。サンクイーンや清見などの柑橘類の栽培と、マグロをはじめとする漁業が盛んです。

 取材では、パチンコホール『セントラルパーク津久見店』のバックヤードにおいて、同店を運営する株式会社 セントラル カンパニーの力武一郎代表取締役社長、そして同店の櫻井店長、平島副主任をはじめとするスタッフの方々に、主に依存(のめり込み)の問題への対応について、お話をうかがいました。力武社長は、パチンコへの依存(のめり込み)をいち早く問題提起し、業界団体に働きかけてリカバリーサポート・ネットワーク(RSN)設立に深くかかわった、いわばRSN「生みの親」のお一人です。力武社長には、自店舗での依存(のめり込み)問題への対応についてだけでなく、活動開始から10年が経過したRSNの活動について、また最近のパチンコ業界についても聞いてきましたので、RSN機関誌「さくら通信」などで記事にしていきたいと思います。

 隣町の臼杵や佐伯には、九州の大手ホールチェーン企業の系列店があります。また道路事情にもよりますが、車で1時間ほどかかる大分や別府の巨大商圏にはナショナルブランドのホールチェーン企業が進出しています。ですが津久見市内のパチンコホールは現在、『セントラルパーク津久見店』1店舗のみ。地域住民に占める高齢者人口の割合が高いことを反映して、特に平日昼間の顧客には高齢者層の比率が非常に多くなっているとのことでした。

 同店における接客面での最大の特徴は、『セントラルパーク津久見店』ではスタッフの一人ひとりが「お客様リスト」をつくっているということです。リストには個々のお客様の特徴やお客様とのやり取りが書き込まれていて、その情報をスタッフ間で共有します。スタッフは、特に注意が必要だと思われるお客様については、コミュニケーションと観察を通して、パチンコやパチスロの遊技機の好みや利用する遊技料金の価格帯だけでなく、家庭環境や性格、お財布事情までを想像し、のめり込みの問題が起こってはいないかを見守ります。気軽に声をかけてもらえるような話しやすい雰囲気づくりも重要です。「店長を呼んで来い」というクレームや「出らんなー」といった愚痴があっても、それらは実はスタッフに話を聞いてもらいたいだけだった―――という時もあったそうです。

 パチンコを取り巻く環境は急速に変化しています。パチンコが勝ち負けよりも時間消費型の娯楽としての性格をさらに強めていったとき、またパチンコホールが高齢化のすすむ過疎地において、残り少なくなった人の集まる施設としてコミュニティにおける存在感を高めていったとき、パチンコとパチンコホールに期待される役割もこれまでとは変化せざるを得なくなります。

 顔認証技術や位置情報処理技術の発達によって、お客様をデータに還元し処理する技術が日進月歩の進展を見せています。ですが依存(のめり込み)の問題はデータに置き換えられたお客様像からは見えてこないのではないでしょうか。この問題は、顔の見える人格的な、そして社会的な関わりの中で像を結ぶお客様像からのみ、ぼんやりと見えてくる問題であると思われます。

知的情報サービスセンター 平田
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